■ 介護保険ですべてはカバーできているのか?
「介護保険外サービスはブルーオーシャン」と言われることがあります。
確かに、保険適用外のサービスは制限が少なく、自由度が高い分、新たな市場として注目されています。
しかし、そもそも――
介護保険で利用者の希望は本当にすべて満たされているのでしょうか?
介護保険には、
- 単位数の上限
- 提供できるサービス内容の制限
- 算定ルール
- 人員配置基準
など、細かい決まりがあります。
一方で利用者は、制度の制限とは関係なく
「これもお願いしたい」
「あれもやってほしい」
と自然に希望されます。
この“制度と現実のズレ”が、介護保険外サービスという言葉を生み出しているのかもしれません。
■ 無料サービスが生む“見えない負担”
現場では、本来は保険対象外の内容をサービス(無料)で対応している事業所も少なくないのではないでしょうか。
その結果、
- やってくれる事業所=優しい
- やってくれない事業所=厳しい
という見られ方になってしまう。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
最初に1人へ無料で対応すると、
「他の利用者にも同じことをしなければならない」状況になります。
人数が増えれば増えるほど、
- 職員の時間が奪われる
- 通常業務が圧迫される
- 不満や苦情につながる
という悪循環が生まれます。
そして最終的には、
- 事業所が妥協する
- 職員が疲弊する
- 退職者が出る
という結果に繋がることもあります。
ブルーオーシャンの前に、まず目の前の現場が沈みかねない状況もあるのです。
■ 実費サービスとして明確に分けるべきか?
では、介護保険でカバーできない部分は
「実費サービスとして明確に分ける」
という形にしてしまえばいいのでしょうか。
理屈としては合理的です。
ただし問題は、
料金設定が自由であることです。
完全自由価格になると、
- 入居紹介会社
- 派遣会社
のように「言い値」に近い形になる可能性もあります。
それでは、
- お金のある事業所に依頼が集中
- 小規模事業所は参入困難
- サービスが価格競争になる
という構造になりかねません。
理想論かもしれませんが、
『金額は一定』 / 『勝負はサービスの質』
という形のほうが、介護という世界には合っているのではないでしょうか。
■ 介護保険事業所が参入してよいのか?
もう一つの大きな論点があります。
介護保険適用の事業所が、介護保険外サービスを提供してよいのか?
人員配置の問題、算定時間の区分、監査上の扱いなど、
実務的な課題は多くあります。
訪問介護の提供時間が終わったあと、
そのまま実費サービスに切り替えることは可能なのか?
地域によって判断が違う、いわゆる“ローカルルール”も存在します。
〇〇県では可能
〇〇県では不可
このような状況では、事業所は慎重にならざるを得ません。
まず必要なのは、
全国で統一した考え方と明確なガイドラインではないでしょうか。
■ 本当にブルーオーシャンなのか?
確かに、制度の隙間にあるニーズは大きい。
そこに可能性があるのも事実です。
しかし、
- 人員基準との整合性
- 介護保険法との関係
- 価格の公平性
- 地域格差の解消
こうした課題を整理しなければ、本当の意味でのブルーオーシャンにはなりません。
むしろ今は、
「未整備の海」
に近い状態かもしれません。
■ まとめ:課題を越えた先に広がる可能性
介護保険外サービスは、確かに可能性のある分野です。
しかし、単純に「儲かる市場」と捉えるのは危険です。
まず必要なのは、
- 制度の整理
- 全国統一の指導基準
- 公平な料金の考え方
- 介護事業所が安心して参入できる環境
これらを整えた先に、
本当のブルーオーシャンが広がるのではないでしょうか。
介護の世界だからこそ、
「価格で勝つ」のではなく
「質で選ばれる」
そんな市場になることを願いたいと思います。
■ 引用・参考
- Joint 介護
「介護保険外サービスはブルーオーシャン?」
https://www.joint-kaigo.com/articles/44257/
