木. 2月 19th, 2026

介護業界にとって、少し前向きに受け取れるニュースが出ました。
今年度の介護福祉士国家試験は、受験者数が7万8469人(速報)で、昨年度より約3,000人増。増加は2年連続とのことです(元記事:介護ニュースJointの記事はこちら)。

受験者が増えるのは素直に良いことです。
ただ、現場では「人が足りない」という声が続いています。では、この流れは本当に人手不足の改善につながるのでしょうか?今回は制度の変化も含めて、自分の考えをまとめます。


■ パート合格制度の導入でハードルは下がった?

今年から新たに導入されたのが「パート合格制度」です。

試験はA・B・Cの3パートに分かれ、それぞれで基準点を満たせば合格となります。
さらに、一度合格したパートは翌々年まで有効です。

具体例

  • 1年目:A合格、B・C不合格
  • 2年目:B合格、C不合格
  • 3年目:C合格 → 介護福祉士取得

つまり、最大3年かけて取得することも可能になりました。

昨年の合格率は約78.3%。
もともと決して低い数字ではありませんが、この制度を活用すれば、合格の可能性はさらに高まるでしょう。

制度面だけを見ると、取得のハードルは以前よりも下がったといえるかもしれません。


■ 合格率はもともと高水準。それでも“制度の後押し”は大きい

前項でも述べたように、昨年度の合格率は78.3%と報じられています。
受験者の8割近くが合格しているので、決して難しすぎる試験というわけではありません。

そして、試験の合格基準やパート合格の考え方は、試験センターの「合格基準」でも示されています。
参考:介護福祉士国家試験|合格基準(SSSC)

パート合格制度をうまく使えば、途中でつまずいても再挑戦しやすくなります。結果として「合格にたどり着く人」は増える可能性が高いと思います。


■ 受験資格は昔より厳しくなった=資格の“質”は上がっている

一方で、受験資格の条件は昔より整理され、要件が明確になっています。
現在の受験資格(資格取得ルート)は試験センターのページにまとまっています。
参考:受験資格(資格取得ルート図)(SSSC)

以前は「実務3年」で受験できた時代がありましたが、今は実務経験ルートでも実務者研修の修了などが前提になります。

昔は、現場経験はあっても十分な研修や体系的な学びがないまま受験し、合格するケースもあったと思います。そうなると「資格はあるのに技術面が不安」という見られ方が起きやすい。
この点で、養成・研修を経由する仕組みは、介護福祉士の“専門職としての信頼”を高める意味で良い方向だと感じます。


■ それでも現場の人手不足は続く…なぜ?

ここが一番の疑問です。
受験者数は増えている。合格率も高い。制度も取りやすくなっている。
それでも、特養では「人がいないのでフロアを開けられない」といった話を聞きます。ヘルパーステーション、デイサービス、ショートステイ、特定施設など、どこも採用に苦労している印象です。

もちろん、合格者の全員が「新規で介護職に入る」わけではありません。
すでに働きながら受験している人もいますし、外国人の方もいます。
それでも、“増えている割に不足感が減らない”現実があります。


■ 資格を取っても報われにくい? 賃金差が小さい問題

個人的に大きな要因だと感じるのは、資格による賃金差です。

一般的な資格手当の相場は次のように言われています。

  • 介護福祉士:10,000~20,000円
  • 実務者研修:5,000~15,000円
  • 初任者研修:3,000~5,000円

しかし実際には、差額が数千円程度というケースも少なくありません。

ここで考えてほしいのが、「取得までの時間」です。

介護福祉士(無資格の場合)

  • 実務3年以上
  • 実務者研修修了(研修期間 約6か月・450時間以上・試験有)
  • 年1回の国家試験
  • 不合格なら翌年再挑戦

介護職員実務者研修(無資格の場合)

  • 実務経験3年以上
  • 実務者研修修了(研修期間 約6か月・450時間以上・試験有)

介護職員初任者研修(無資格の場合)

  • 「介護職員初任者研修」を開講しているところへ申し込む
  • 130時間のカリキュラムを受講・試験有
  • 約1ヶ月~4か月で取得可能(短期集中講座等もあるため)

無資格の方が、介護福祉士の資格を取得する場合、順調にいって最低でも4年以上。
人によっては何年もかかります。

それだけ時間と努力をかけて取得した国家資格なのに、
手当の差がわずか数千円。

これでは、「なぜそこまで頑張るのか?」という疑問が生まれても不思議ではありません。


■ モチベーションが上がらない構造

介護の現場では、資格の有無に関わらず業務内容が大きく変わらないことも多いです。

もちろん責任や役割の違いはありますが、
体力的・精神的負担はほぼ同じ。

賞与で差をつける法人もあるでしょうが、
資格によって数万円単位で大きな差がつくことはあまり聞きません。

この構造が、「資格を取っても大きく変わらない」という空気を作っているのではないでしょうか。


■ もっと大胆な評価が必要では?

個人的には、介護福祉士と他資格との差は、数万円あってもよいと思います。

それだけ明確な差があれば、

  • 上位資格を目指す人が増える
  • 専門職としての誇りが高まる
  • 離職率の低下につながる

可能性は十分あるはずです。

さらに言えば、国が「資格手当の最低基準」を設けるという考え方も一つの方法かもしれません。

処遇改善加算はありますが、「資格差」をもっと明確に打ち出す政策があってもよいのではないでしょうか。


■ これからの介護業界に必要な視点

介護福祉士を目指す人が増えている。
これは本当に素晴らしいことです。

しかし、取得後に現場で活躍し続けてもらわなければ意味がありません。

そのためには、

  • 専門性に見合った賃金
  • 明確なキャリアパス
  • 資格の価値を実感できる評価制度

この3つが欠かせないと感じています。


■ まとめ

介護福祉士の受験者数増加は希望の光です。
パート合格制度により、挑戦しやすい環境も整いました。

しかし、資格を取得しても現場に残らない、頑張っても評価されにくい、

この構造が変わらなければ、人手不足は根本的には解決しないのではないでしょうか。

これからの介護を支えるのは「人」です。
だからこそ、資格の価値と賃金のあり方を、業界全体で真剣に考える必要があると感じています。

今後の制度改革や企業の取り組みに期待しながら、
自分自身も、資格の価値を高められる事業運営をしていきたいと思う今日この頃です。

引用・参考文献

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